人の眼はよくカメラにたとえられます。カメラのレンズに相当する動きをするのが水晶体です。
その働きには レンズとして光を集める働きとピントを合わせる機能があります。 この機能も年をとると共に低下し、近くの物が見えにくくなります。この状態を老視(老眼)といいます。 水晶体のもう一つの特徴は、透明な組織で光を透過し、眼底の網膜に光を集め、外界の物体の像を結ぶ働きです。透明なはずの水晶体が濁ってくると光が眼底に入る前に散乱されて、網膜に像を結ぶ働きが弱くなり、かすんで見えるようになります。この水晶体が濁った状態を白内障といいます。

■症状 1)かすんで見える。 水晶体の濁りが中心部に及んでくるとかすんできます。濁りが進行するとしだいに物がみえなくなってきます。 2)まぶしくなる。 光の強い戸外や逆光では特にまぶしく感じるようになります。 3)暗くなると見えにくくなる。 水晶体は高齢になるほど黄色に着色してきます。 これに水晶体の濁りが加わると暗いところで、特に 見えにくくなります。 4)一時的に近くが見えやすくなる。 水晶体の近くにある核の濁りが強くなると、屈折力が増して、老眼が治ったような状態になり、眼鏡なしでも近くが見えるようになることがありますが、遠くは見えにくくなります。 5)二重、三重に見える。 水晶体の濁り方によっては物が2つにも3つにも 見えるようになることがあります。 6)眼の痛みや充血はない。 水晶体には神経や血管がないため、痛みや充血はありませんが、まれに水晶体の濁りが進んで緑内障になると急に痛みや充血が起こります。

■どうして起きるの? 水晶体が濁る原因には、糖尿病、アトピー性皮膚炎などの全身病や緑内障など他の眼疾患、放射線、薬の副作用、遺伝などがありますが、50歳代以降の健康者にも起こります。 水晶体は蛋白質33%、水66%、ミネラル1%から構成されていますが、この透明な蛋白質は老化に加え、外界の誘発因子(紫外線等)により、蛋白分子が大きくなり、水に溶ける性質を失って濁ってくるのです。 また蛋白質の中のアミノ酸の一部は光によって分解され、水晶体が黄色に着色されてきます。 水晶体の中にあるビタミンCやグルタチオン等の物質も減少し、ミネラルでは、カリウムの減少、ナトリウム、カルシウムの増加があり、水晶体の濁りの原因となります。


■どんな治療があるの? 白内障の治療には上の原因でのべました他、まだ不明な点が多く残っている眼疾患の一つです。 わが国では 薬剤治療においては、水晶体の混濁を遅らせる点眼薬、及び内服薬が用いられています。 通常は、混濁が進行して視力が低下し、日常生活に支障をきたすようになると水晶体を摘出します。 水晶体を取り除いた後は、眼鏡をかけるかコンタクトレンズを装用するか、または、眼内レンズ(人工水晶体)を挿入することにより、視力を回復することも可能です。 現在日本では、1年間に約20万人の人が老人性白内障の手術を受けています。また眼内レンズを挿入する時期・年齢・症状などについては主治医とよく相談し、説明して心配のないように行っています。 老人性白内障は適切な治療により、視力回復が望める疾患です。
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